カニスの血を嗣ぐ

カニスの血を嗣ぐ

カニスノチヲツグ

講談社ノベルス

嗅覚が極度に発達した隻眼の男・阿川。彼は死んだ犬に付いていた匂いを、バーで出会った女に嗅いだ。が、一夜を共にした後、女も急死。悲劇の香りを辿れば、そこには男を破綻させた過去と女の一家の不幸があった。カニス、ラテン語で犬。昏(くら)い伝言を嗅ぎ回る男にも魔手が迫る。幻想にむせ返り、心震える傑作!

『カニスの血を嗣ぐ』を読む人間は、読書という行為が、そのまま未知の体験に重なることに驚愕を覚えるだろう。こんな小説はこれまで誰も読んだことがない。まず、どこまでもリアルな現実世界があり、その裏側に、幻想的で、かつ生々しい“匂いの世界”がある。が、この小説が真に奇蹟的なのは、その彼方に遠望される“カニスの世界”の描写ではないか。郷愁に満ちた“カニスの世界”は、すでに永遠に失われているがゆえに、僕らの魂を激しく揺さぶらずにはおかない。慟哭せずにはいられないのだ。──山田正紀


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書誌情報

紙版

発売日

1999年08月05日

ISBN

9784061820913

判型

新書

価格

定価:1,078円(本体980円)

ページ数

367ページ

シリーズ

講談社ノベルス

著者紹介