丘の一族 小林信彦自選作品集

丘の一族 小林信彦自選作品集

オカノイチゾクコバヤシノブヒコジセンサクヒンシュウ

講談社文芸文庫

<物語>と<私>のあいだ

『オヨヨ島の冒険』に始まる笑いと諷刺の作品群、『冬の神話』に刻まれる小林信彦の原点、多彩な作品は著者の鋭い批評精神に支えられ、独得の世界を構築する。敗戦直後の日常を、東京下町に生まれ育った中学生の<眼>をとおし捉えた「八月の視野」、戦前の下町の風情を彷彿させる遊び人・清さんを主人公に描く「みずすましの街」、ほかに表題作及び「家の旗」。著者自選。傑作中篇小説4篇。

小林信彦
私小説はきらいではないが、書くのは向かないと思っていた。30代に入り、小説を日常的に書くようになると、そうも言っていられないようになった。日本の<文壇>というのは、逆に、<作者の告白=私小説>を要求しているらしい、とわかってきた。もちろん、それは古めかしい私小説ではなく、<私の内面のとめどない追究>といったものだが、ぼくの好みとはまったく違っていた。そこで、というか、やむをえず、というか、とりあえず、<物語>と<私>をくっつけてしまおうと考えた。それが「丘の一族」である。――<「著者から読者へ」より>


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書誌情報

紙版

発売日

2005年11月10日

ISBN

9784061984240

判型

A6

価格

定価:1,430円(本体1,300円)

ページ数

352ページ

シリーズ

講談社文芸文庫

初出

底本を使用し、著者により一部訂正を加えた。

収録作品

  • 作品名

    丘の一族

    初出

    底本:『家族漂流』文春文庫’96年6月

  • 作品名

    家の旗

    初出

    底本:『家族漂流』文春文庫’96年6月

  • 作品名

    八月の視野

    初出

    底本:『夢の街その他の街』文芸春秋’79年9月

  • 作品名

    みずすましの街

    初出

    底本:『侵入者』文春文庫’04年12月

著者紹介