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花影
カエイ

女の盛りを過ぎようとしていたホステス葉子は、大学教師松崎との愛人生活に終止符を打ち、古巣の銀座のバーに戻った。無垢なこころを持ちながら、遊戯のように次々と空しい恋愛を繰り返し、やがて睡眠薬自殺を遂げる。その桜花の幻のようにはかない生に捧げられた鎮魂の曲。実在の人物をモデルとして、抑制の効いた筆致によって、純粋なロマネスクの結構に仕立てた現代文学屈指の名作。
花の哀れに託した女の一生。
女の盛りを過ぎようとしていたホステス葉子は、大学教師松崎との愛人生活に終止符を打ち、古巣の銀座のバーに戻った。無垢なこころを持ちながら、遊戯のように次々と空しい恋愛を繰り返し、やがて睡眠薬自殺を遂げる。その桜花の幻のようにはかない生に捧げられた鎮魂の曲。実在の人物をモデルとして、抑制の効いた筆致によって、純粋なロマネスクの結構に仕立てた現代文学屈指の名作。
小谷野 敦
葉子が最後に死ぬことは、エピグラフによって暗示され、作品全体は、あたかも夢幻能における死者の語りのように描かれているのである。『花影』を日本の文学伝統のなかに位置づけるなら、それは一見花柳文学だが、実は鬘能の系譜に連なるものなのである。能楽は、徳川時代、武家の武楽であった。つまり武士的精神を枠組として女の色恋を描こうとすれば、死者となった女の語りという形式をとるほかないのである。――<「解説」より>
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書誌情報
紙版
発売日
2006年05月11日
ISBN
9784061984400
判型
A6
価格
定価:1,320円(本体1,200円)
ページ数
208ページ
シリーズ
講談社文芸文庫
電子版
発売日
2014年05月16日
JDCN
0619844000100011000A
初出
’95年4月、筑摩書房刊『大岡昇平全集 7』を底本とし、多少ふりがなを加えた。
著者紹介
解説: 小谷野 敦(コヤノ アツシ)