山躁賦

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電子あり

山躁賦

サンソウフ

講談社文芸文庫

確かなものに思われた日常の続きをふと見失った「私」は、病み上がりのけだるい心と体で、比叡高野等の神社仏閣を巡る旅に出る。信仰でも物見遊山でもない中ぶらりんの気分で未だ冬の山に入った「私」を囲み躁ぐ山棲みのモノ達――。現在過去、生死の境すら模糊と溶け合う異域への幻想行を研ぎ澄まされた感覚で描写。物語や自我からの脱出とともに、古典への傾斜が際立つ古井文学の転換点を刻する連作短篇集。


日常を見失い山を彷徨う「私」 古の「歌」と同行二人

確かなものに思われた日常の続きをふと見失った「私」は、病み上がりのけだるい心と体で、比叡高野等の神社仏閣を巡る旅に出る。信仰でも物見遊山でもない中ぶらりんの気分で未だ冬の山に入った「私」を囲み躁ぐ山棲みのモノ達――。現在過去、生死の境すら模糊と溶け合う異域への幻想行を研ぎ澄まされた感覚で描写。物語や自我からの脱出とともに、古典への傾斜が際立つ古井文学の転換点を刻する連作短篇集。

古井由吉
とにかく闊達に自在に、かつ無責任に、書いたものだ。こんなに伸びやかに書けるという幸運に、最晩年までもう一度、恵まれるだろうか、と今では自分でうらやんでいる。軽快に筆が運んだはずだよ、だって半分以上は本人の筆というよりも、古人が著者の愚鈍さに業を煮やして、それでもその思慕の情をいささか憐れんで、使いの者を送り、下手の筆をふんだくって、なりかわって書かせたのだから、とつぶやきたくもなる。――<「著者から読者へ」より>


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目次

無言のうちは
里見え初めて
陽に朽ちゆく
杉を訪ねて
千人のあいだ
海を渡り
静こころなく
花見る人に
肱笠の 肱笠の
鯖穢れる道に
まなく ときなく
帰る小坂の
著者から読者へ

書誌情報

紙版

発売日

2006年09月09日

ISBN

9784061984530

判型

A6

価格

定価:1,650円(本体1,500円)

ページ数

256ページ

シリーズ

講談社文芸文庫

電子版

発売日

2016年04月08日

JDCN

0619845300100011000K

初出

『山躁賦』(’82年 集英社刊)を底本とし、多少ひらがなを加えた。

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