
存在の秋
ソンザイノアキ

わが歌よ、死者の打つ木魂のように空を走れ!
ムササビ飛び交い、魑魅(すだま)ざわめく夜。かすかな風がそよぎ、杉木立ちに木洩れ日の射す昼。古代、そして中世の古俗・伝承に色濃く隈取られた霊異の地・吉野に生まれ育ち、暮らし続ける現代短歌界の巨匠が、静かな生活の中で、四季の移ろい、花鳥の奥に山河慟哭の声を聴く。現代文明の中で見失った人間の魂を呼び覚ます山住みの思想と、詩心溢れる好随筆集。――いったい人間存在のゆたかさとは何であろうか。
長谷川郁夫
現代詩の亡命者は新たな杣人として、山の暮らしの語り部となった。血塗られた歴史の深い闇、魑魅(すだま)たちが跋扈する音のない世界、常なる「奈落」の声を伝えるのである。“知る”とは、机上の作業ではなく、自らを森羅万象と同化させることだった。地霊、祖霊との交信者を魂の詩人(=錬金術師)と呼ぶなら、その意味で、シャーマンになったのだ、といいかえてもよい。吉野の地との黙契が生じた。――<「解説」より>
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書誌情報
紙版
発売日
2006年09月10日
ISBN
9784061984547
判型
A6
価格
定価:1,430円(本体1,300円)
ページ数
272ページ
シリーズ
講談社文芸文庫
初出
77年12月小沢書店刊『存在の秋』を底本として使用し、著者による加筆訂正を行った。
収録作品
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作品名初出
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作品名
冬の日
初出
初出:『奈良県観光新聞』’68年1月
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作品名
山の新春、山の伝承
初出
初出:『毎日新聞』’69年1月
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作品名
ささやかな晴耕雨読
初出
初出:『毎日新聞』’74年1月
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作品名
春を待つ心
初出
初出:『小学国語6』’70年4月
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作品名
花おそげなる
初出
初出:『読売新聞』’70年3月
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作品名
花近し
初出
初出:『俳句』’73年4月
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作品名
ホトトギスの夜
初出
初出:『読売新聞』’76年6月
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作品名
山の弦楽奏者
初出
初出:『大法輪』’77年8月
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作品名
麦秋
初出
初出:『読売新聞』’75年5月
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作品名
虹
初出
初出:『朝日新聞』’72年7月
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作品名
石をまつる
初出
初出:『朝日新聞』’74年8月
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作品名
山の暮しの寂寥
初出
初出:『毎日新聞』’75年8月
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作品名
秋立てるはや
初出
初出:『毎日新聞』’73年8月
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作品名
日を読む
初出
初出:『読売新聞』’70年9月
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作品名
死者たちのさわぐ夕暮れ
初出
初出:『朝日新聞』’71年11月
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作品名
花鳥の奥に
初出
初出:『朝日新聞』’75年11月
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作品名
自然の泪
初出
初出:『読売新聞』’75年12月
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作品名
雪嶺に問う
初出
初出:『読売新聞』’74年1月
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作品名
存在の秋
初出
初出:『都市』’70年10月
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作品名
山人の意識の半球
初出
初出:『国語科通信』’76年12月
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作品名
交霊の密儀
初出
初出:『短歌』’77年3月
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作品名
虚の空間
初出
初出:『国文学』’77年2月
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作品名
その大刀はや
初出
初出:『読売新聞』’71年1月
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作品名
修羅の光芒 村上一郎のこと
初出
『雁』1975年8月
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作品名
国原の時間ー『死者の書』のイメージ
初出
初出:『短歌』’63年1月
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作品名
擣衣のこころー小倉百人一首のことなど
初出
初出:『奈良県観光新聞』’67年1月
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作品名
覇道とさくら
初出
初出:角川書店刊『太平記・曾我物語』’76年8月
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作品名
修験の花
初出
初出:国際情報社刊『ふるさとの旅』’76年10月
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作品名
悲歌のこころ
初出
初出:『こころ紀行』’77年6月
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作品名
黒潮の霊異 潮の岬にて
初出
主婦と生活社刊『旅情』1969年3月
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作品名
暮しの臍の緒
初出
初出:『読売新聞』’75年1月
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作品名
早春の記
初出
初出:『読売新聞』’72年3月
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作品名
野をなつかしむ
初出
初出:『読売新聞』’72年5月
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作品名
空の冥府
初出
初出:『奈良県観光新聞』’72年7月
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作品名
北山郷の一夜
初出
初出:『奈良県観光新聞』’68年8月
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作品名
山人幻想
初出
初出:『奈良県観光新聞』’64年8月
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作品名
月の出
初出
初出:『奈良県観光新聞』’67年9月
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作品名
眠れ、星宿のしたたる闇に
初出
初出:『読売新聞』’73年10月
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作品名
吉野の山人
初出
初出:学芸書林刊『奈良・大和路』’68年11月
著者紹介
解説: 長谷川 郁夫(ハセガワ イクオ)