
世の中へ・乳の匂い 加能作次郎作品集 荒川洋治編
ヨノナカヘチチノニオイカノウサクジロウサクヒンシュウアラカワヨウジヘン

大正期を代表する作家の人情味溢れた世界
郷里を出奔し、苦難に満ちた京都での丁稚時代をつぶさに描き、文壇的地位を確立した「世の中へ」、大正文壇に貢献した編集者でもあった著者が、その時代の痛切な一齣を活写した「羽織と時計」、郷里の海難に材をとった「屍を嘗めた話」、生涯の傑作と声価を高めた「乳の匂い」等8篇を収録。大正を代表する自然主義作家の、深く誠実な人生観照にもとづく、濃やかな人情味溢れた絶品集。
荒川洋治
若き日の生活が、文学への思いを深めさせるだけではなく、みずからの文章を励まし、支えたのではないか。故郷に心を向けながら、加能作次郎は新たな「世の中」へと向かっていた。よりひろい世界のなかに置かれる、文学の姿を夢見ていたのだ。(中略)ぼくは加能作次郎の作品を読むたびに、未知の光に顔を打たれるような、新鮮な感じにおそわれる。――<「解説」より>
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書誌情報
紙版
発売日
2007年01月12日
ISBN
9784061984653
判型
A6
価格
定価:1,540円(本体1,400円)
ページ数
288ページ
シリーズ
講談社文芸文庫
初出
「恭三の父」「世の中へ」「乳の匂い」は『加能作次郎作品集』(編集・加能作次郎の会、発行・富来町立図書館、’04年11月)を、「汽船」「迷児」「屍を嘗めた話」「母」は『加能作次郎選集』(加能作次郎生誕百年祭実行委員会、’85年9月)を、「羽織と時計」は『石川近代文学全集』第5巻(石川近代文学館、’88年2月)を底本とする。
収録作品
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作品名初出
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作品名
恭三の父
初出
初出:『ホトトギス』’10年(明治43)7月号
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作品名
汽船
初出
初出:『文章世界』’14年(大正3)4月号
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作品名
迷児
初出
初出:『早稲田文学』’18年(大正7)6月号
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作品名
世の中へ
初出
初出:『読売新聞』’18年(大正7)10月~12月
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作品名
羽織と時計(W・B君を弔う)
初出
初出:『新潮』’18年(大正7)12月号
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作品名
屍を嘗めた話
初出
初出:『太陽』’20年(大正9)7月号
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作品名
母
初出
初出:『早稲田文学』’35年12月号
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作品名
乳の匂い
初出
初出:『中央公論』’40年8月号
著者紹介
編・解説: 荒川 洋治(アラカワ ヨウジ)