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糞尿譚・河童曼陀羅(抄)
フンニョウタンカッパマンダラショウ
- 著: 火野 葦平

人は地を這い、河童は天翔ける 火野文学の「聖」と「俗」
出征前日まで書き継がれ、前線の玉井(火野)伍長に芥川賞の栄誉をもたらすと共に、国家の命による従軍報道、戦後の追放という、苛酷な道を強いた運命の1冊「糞尿譚」。郷里若松の自然と人への郷愁を、愛してやまない河童に託し夢とうつつの境を軽やかに飛翔させる火野版ファンタジー、「河童曼陀羅」。激動の昭和を生き抜く庶民的現実と芸術の至高性への憧憬――聖俗併せもつ火野文学の独自の魅力に迫る。
井口時男
火野の河童たちには、どれも、弱者、敗者の哀れと滑稽がにじんでいる。そもそも敗者の落魄は、零落した神としての河童の本性に属するものだが、それだけではあるまい。「河童は、詩と小説との間を彷徨した私が、ほっとためいきをついたような場所」なのだ、と解説で火野はいう。そのとおりなのだろう。戦中戦後と猛烈な勢いで原稿を書きつづけた火野葦平の、これは「ためいき」のような世界なのかもしれない。――<「解説」より>
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書誌情報
紙版
発売日
2007年06月10日
ISBN
9784061984813
判型
A6
価格
定価:1,430円(本体1,300円)
ページ数
272ページ
シリーズ
講談社文芸文庫
初出
底本:『火野葦平選集』一巻・三巻(’58年3月・7月 東京創元社刊)