柿二つ

柿二つ

カキフタツ

講談社文芸文庫

死に往く子規と、見つめる虚子。写生文の白眉と称される長篇小説。

「余りの苦しさに天地も忘れ……野心も色気も忘れてしもうて、もとの生れた儘の裸体にかえりかけているのだな。」K(虚子)は……尊い心持で其話を聞いていた。(第十八回「介抱」)正岡子規と高浜虚子――無二の友でありかつ火花を散らす二つの個性。病床に臥す子規の日常、死を所有する内奥の恐怖と孤独を凝視、写実に徹した写生文の白眉と評された長篇小説。題名は「三千の俳句を閲し柿二つ」(子規)による。

山下一海
子規と虚子の間のさまざまな交渉や葛藤が、子規を主としながら、とくに感情的、心理的な側面から、赤裸々に描きだされている。素材的な意味だけでも、興味津々たる小説である。表題は、子規が京の禅僧で歌人の愚庵から贈られた好物の柿が二つ残っていて<三千の俳句を閲し柿二つ>の句を作ったことによるものであろうが、小説の全体を読むと、子規と虚子というたぐいまれな存在が、二つの艶やかな柿のように思われてくる。――<「解説」より>


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書誌情報

紙版

発売日

2007年08月12日

ISBN

9784061984868

判型

A6

価格

定価:1,540円(本体1,400円)

ページ数

304ページ

シリーズ

講談社文芸文庫

初出

底本:『柿二つ』(’15年5月新橋堂刊)

著者紹介