
贋・久坂葉子伝
ニセクサカヨウコデン
- 著: 富士 正晴

愛に殉じた若き伝説の女性作家、その可憐で熾烈な生涯。
昭和27年の大晦日、21歳で列車に身を投じた伝説の女性作家・久坂葉子。名門家庭の重圧に抗いつつ、敗戦後の自由と倦怠の空気の中で、自らの芸術を追い求め、愛と性に殉じた可憐で強烈な生涯。3人の男性の間で激しく揺れ動く自分を「罪深き女」と断罪し、本当のことのみを書くと、死の当日まで綴った作品を残して逝った、その死に至る過程を、師の温かい眼差しで見事に描破した力作長篇。
山田稔
愛惜と悔恨の情は、すでに久坂の通夜でつぎのような疑問をいだかせていた。「本当にあの棺桶の中に久坂が入っているのかな」。(中略)この、久坂生存・転生のテーマというか願望は重要で、後々まで富士正晴のうちに生きつづける。(中略)自殺をうまく「すり抜け」たにせの久坂葉子が両性具有者(彼女には男の子じみたところがあった)として転生し、この世のどこかに生きつづける、いわば富士版『オーランド』が書かれたかもしれない。――<「解説」より>
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書誌情報
紙版
発売日
2007年08月12日
ISBN
9784061984875
判型
A6
価格
定価:1,980円(本体1,800円)
ページ数
640ページ
シリーズ
講談社文芸文庫
初出
底本:ちくま文庫『贋・久坂葉子伝』(’95年2月)