
モリさんの「釣って食べて」
モリサンノツッテタベテ
- 著: 盛川 宏
釣魚食味歳時記
魚と戯れ、漁師料理に舌鼓を打つ――
筆舌も及ばぬ釣りの醍醐味ここにあり!!
釣果と食味が倍増する珠玉のエッセイ
その人は「マダイがあがってくるとね、海面がパッと赤く染まるんだよ」といったのだった。それはすこぶる感動的で、ボクはその話を聞いてタイ釣りをはじめたようなものだった。けれども実際にマダイが釣れたときはもう無我夢中で、海の水が真っ赤に染まった場面など見たこともなかった。
「今度こそ確かめてやろう」と海中を覗き込んだことがある。だが海の水は赤くはならなかった。タイは海中で青白い燐光を放っただけだった。
それからしばらくして、40センチもある立派なアマダイがダブルでかかってきたとき、ボクは海が赤く染まる話をまったく唐突に思い出したのである。アマダイからしたたり落ちる雫がまさしくピンクに見えたのだ。嫋々たる感じはまるで湯上がりの美女のように美しく、水滴はピンクに光り輝いていた。魚体からしたたり落ちる雫がピンクであるなんてことは金輪際あり得ないにもかかわらず、ボクの目にはたしかにそう見えたのだ。
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目次
〔春〕雪代ヤマメ/花イカの季節/イカナゴの釜揚げ/地サザエのカレー/大海原と浜鍋/手釣りイサキ/イワナの職漁師
〔夏〕相生のタイ/エサ採り3年/照りゴチ/真子と白子/シマアジの一発/デキハゼ/真夏のイカの沖干し/船上料理/島行き今昔/幻の琉球アユ
〔秋〕ハゼのてんぷら船/坊主の土産/あやかりダイ/ハコフグのモツ煮込み/サバのサン、サン締め/カンパチのカッタクリ/手塩の干物
〔冬〕アコウダイの堤灯行列/アマダイの三段引き/ビシマのタイ釣り/食いの立つ潮どき/カワハギ病/極上冬のイサキ/ヒラメのエンガワ/ヒラメの当り針/アラの粗の水炊き/波浮の豊饒
書誌情報
紙版
発売日
1995年09月08日
ISBN
9784062076876
判型
四六
価格
定価:1,495円(本体1,359円)
ページ数
246ページ