銀幕座 二階最前列

銀幕座 二階最前列

ギンマクザニカイサイゼンレツ

「阿久悠」作家活動30周年記念出版
映画館が学校だった。
映画に魅せられた人々の愛と人生が交錯する、銀幕座2階最前列での青春の日々……。

最近の流行語は、時代の閉塞観であるが、そんなものはいつの時代にもあり、閉塞状態でどう金魚のように酸素を取り込むかに身悶えるのが人間である。本書はまた、金魚のように呼吸する物語でもある。時代は常に重い。――あとがきより

これは、ラーメン1杯が40円、喫茶店のコーヒーが50円、大学卒の初任給が大企業で、1万4000円といった頃、昭和30年代初頭の物語である。戦後の混乱はおさまったものの、神武景気から鍋底景気へと社会が揺れ動いていた、いわば歴史の曲がり角のような時代を生きた若者たちの物語である。
まだテレビの時代ではなく、映画の全盛期であった。誰もが貧しく、危なっかしく、そして真剣に生きていた。シナリオライター志望の大学生「ぼく」は行きつけの映画館で、ジゴロのような男・宇田川旭から半ば強制的にピノキオのような少女・水木亜沙子を預かってくれと頼まれる。そして、あじさい荘での奇妙な同棲生活が始まる。次第に彼女に興味を覚え、窮屈ながらも、この生活をしばらく続けたいと思うのだが……


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書誌情報

紙版

発売日

1996年07月23日

ISBN

9784062083041

判型

四六

価格

定価:1,923円(本体1,748円)

ページ数

231ページ

初出

『カードエイジ』㈱ジェーシービー発行の1994年4月号から1994年4月号から1996年3月号に連載された『二階最前列』を改題、加筆

著者紹介