
密室大坂城
ミッシツオオサカジョウ
- 著: 安部 龍太郎

闇を裂く1本の朱柄(あかえ)の矢
史上最大の落城を鮮烈スリリングに描き、秀頼、淀殿の隠された人間悲劇に迫る傑作。
矢倉の格子窓からは、火柱となって燃え上がる天守閣が見えた。奥御殿では今だに抵抗をつづけている者たちがいるらしく、時折激しく鉄砲を撃ち合う音がする。矢倉の上をかすめる銃弾が炎に照らされ、朱色の糸を引いたように飛び過ぎてゆく。(ああ、朱柄の矢のようだ)ぼんやりと飛び交う銃弾をながめているうちに、秀頼は深い眠りに落ちていた。〈我ハ少シマドロミテ、其後切腹スベシト曰ヒテ、小姓ノ膝ヲ枕トシテ、大鼾カイテシヅマリ給フ〉秀頼の最期の様子を伝えた「豊内記」はそう記している。──(本文より)
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書誌情報
紙版
発売日
1997年01月24日
ISBN
9784062085281
判型
四六
価格
定価:1,650円(本体1,500円)
ページ数
266ページ
初出
『季刊歴史ピープル』’96年秋号一挙掲載