誰もわたしを愛さない

誰もわたしを愛さない

ダレモワタシヲアイサナイ

文芸(単行本)

待望の“柚木草平シリーズ”新相棒小高直海と女子高生不可解ワールドに挑む! 肩に手をかけてみたが、直海は本気で寝込んでいて、寝息もいびきに変わり、ブルーの上着も左肩が半分ほど脱げかかっていた。俺はジンだけを濃く注いで一口喉を焼き、気合いと一緒に直海の躰をすくいあげた。(中略)骨細に見える躰も脂肪の質感は一人前で、若草のような体臭が一瞬俺を困らせる。俺は直海の躰をベッドにおろしてから、上着とスラックスをはぎ取り、肩の上まで布団をかぶせて、上着を壁のハンガーにセットした。それからスラックスを風呂場に持っていき、尻の泥汚れをシャンプーで洗い、タオルに水分を吸わせて物干しハンガーで部屋の中にぶら下げた。掃除も洗濯も俺の趣味、酔いつぶれた女を襲わないのも俺の趣味で、だからってそんな趣味を誰が褒めてくれるわけでもない。もともと趣味というのは、自分が満足すれば、それでいいだけのことなのだ。(本文より)


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書誌情報

紙版

発売日

1997年05月27日

ISBN

9784062085410

判型

四六

価格

定価:1,870円(本体1,700円)

ページ数

348ページ

初出

『小説現代増刊メフィスト』’96年4月号増刊号、8月増刊号、12月増刊号に掲載されたものを、大幅に加筆、訂正

著者紹介