失楽園(下)

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失楽園(下)

シツラクエン02

文芸(単行本)

二人が育んだ絶対愛の世界。 たった一度の生だから、この人を永遠に自分のなかにとどめておきたい。男と女の性愛の真髄を描き、新聞連載中から圧倒的な反響をまき起した注目の文芸大作。 二人の肌と肌は、一分の隙もないほど密着し、毛穴のひとつひとつまで重なり合うほどに馴染み合っている。 「気持ちがいい……」 それは、久木の全身の皮膚からでた溜息であり、悦びである。 その沸々と、躯の内側から湧きおこるような快感に浸りながら、久木は改めて肌と肌と触れ合う感触が、心の安らぎとともに、ある諦観を生みだしていることに気がつく。 「そうか……」久木は、凛子の柔らかい肌に向かってつぶやく。 「こうしてなら、死ねるかもしれない」 女の肌につつまれると、男はかぎりなくおだやかに、そして従順になる。そのまま、いつか母に抱かれている少年になり、胎児になり、その先は精液の一滴となって消えていく。――(本文より)


書誌情報

紙版

発売日

1997年02月20日

ISBN

9784062085748

判型

四六

価格

定価:1,540円(本体1,400円)

ページ数

284ページ

初出

『日本経済新聞』朝刊に’95年9月1日から’96年10月9日まで連載し、刊行に際して大幅に加筆されました

著者紹介

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