夢時計(上)

夢時計(上)

ユメドケイ

文芸(単行本)

夢の時計がまわるとき。現代を生きるわれわれが待ち望んだ迫真の家庭小説!

「バラードの心境だと言われたが、元気そうではないですか」
湯気をあげる鍋を挟んでビールのコップを合わせると、晃作は正面からしげしげと美夕の顔を覗きこんだ。目尻の下に刻まれた微かな皺は彼女がもう野放図に若くはないことを示していたが、かえってそこに30幾年かを過ごした静かな成熟の影が溜められているようで彼は目を離せなかった。「中谷さんにお会いしているからですわ」「少しばかりおかしな初老ですからね」「おかしいのも、初老も、素敵です」――(本文より)


  • 前巻
  • 次巻

書誌情報

紙版

発売日

1997年11月21日

ISBN

9784062089654

判型

四六

価格

定価:1,760円(本体1,600円)

ページ数

304ページ

著者紹介