花の生涯(上)

花の生涯(上)

ハナノショウガイ

文芸(単行本)

華麗なる歴史ロマン!井伊直弼、村山たか女、長野主膳。幕末を生きた男と女の激しい愛。

(まだ、明るい。お城があんなに、美しい夕焼にかがやいているうちは……)主馬は、白い天守閣に、落日が7色の焔の様に輝くのを眺めながら、つぶやいた。
──もう暫く、時を消すために、主馬は堤を下りて、廓の中へ入っていった。
暮れかける頃の廓は、一入、色めき立って見える。せまい小路をはさんで、立ち並ぶ娼家の名は、金亀楼、八千代楼、清滝など。いずれも、紅殻格子の奥のふかい、なまめいた色街のつくりである。
主馬には、伊勢で結ばれた妻があるが、この1両年、とかく病がちだ。そのせいというわけでもないが、さっき、堤の上と下で、目と目をかわした窓の女の顔が、無意識のうちに、消えやらぬ……。──本文より


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書誌情報

紙版

発売日

1998年02月24日

ISBN

9784062091367

判型

四六

価格

定価:2,530円(本体2,300円)

ページ数

370ページ

著者紹介