花の生涯(下)

花の生涯(下)

ハナノショウガイ

文芸(単行本)

歴史と愛の伝説的名作。
桜田門外の変に至る激動の時代を鮮やかに描く巨匠の流麗な文体!

もはや、疑いもなく、暴徒狂士の襲撃であると知った大老は、こうして、駕籠の中にいることの危険を察知した。とは云え、うっかり、飛出すことは、よけい危い。
(馬鹿者──自分を殺して、どうなると云うのだ)
心の底から、憎悪がつき上げてきた。国粋も尊王も口実で、実際は政治的権力に盲目となっている或る男に煽られて、自分を殺しにやって来た愚かな刺客にすぎない。彼は、たまらなくなって、外へ出ようとし、駕籠の戸に手をかけた瞬間、全身を振り廻すような、激烈な衝撃と共に、あらゆる力を失った。──
乱闘の絵巻はそこかしこに、くりひろげられ、さしもの白雪も、殆ど一面朱にそまっていた。──本文より


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書誌情報

紙版

発売日

1998年02月24日

ISBN

9784062091374

判型

四六

価格

定価:2,530円(本体2,300円)

ページ数

403ページ

著者紹介