
奇病の人
キビョウノヒト
- 著: マルセ 太郎
芸人魂&病人魂の極致!!
「いかに生きるべきかは、いかに演じるかであるというのが、いわば僕の人生観である」「人生が芝居なら、下ろされる幕を、僕はしっかりと見つめたい」
僕はこれまで、僕自身であることを演じ続けてきたと思っている。他人と比較することを恐れた。何歳にしてこれだけのことをしたなんて競争心は、人の心を貧しくするだけである。いつも自分だけを観ている習性があって、失意のときにも、そういう状態にある自分を楽しんだ。あるがままの状況を受け入れ、あたかもそれが芝居の役であるかのように、自分を演じた。筋書きを変えようと努力したことがない。(中略)
現在がんに冒され、短命が予想されるからといって、これまでの生き方に変化が生じるとは思えない。また事実、変えられないものである。ただ続けるだけだ。現にいま、10月の入院を控えながらも、12月に予定している芝居の、台本書きにかからなければと思っている最中である。大衆演劇が題材で、タイトルは「役者の仕事」と決まった。──本文「第3部」より抜
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目次
第1部 奇病運
災い/三十年前の不安/救急車/国立がんセンター東病院/母と老人病院/告知/治る希望/手術/死ぬこと
第2部 奇縁の人々
星の流れ/サル/無駄話/芝居の人々/北村昌子さんのこと/恋なんて簡単よ/お客さんとファン/機関銃トーク/九時五分の男
第3部 病人魂
病院というところ/退院/再発/再々発/「花咲く家の物語」/3度目の再発/生きることは演じること
書誌情報
紙版
発売日
1998年04月24日
ISBN
9784062091954
判型
四六
価格
定価:1,980円(本体1,800円)
ページ数
314ページ