公主帰還

公主帰還

コウシュキカン

文芸(単行本)

中国歴史奇譚のおかしみ!
桂花香る臨安は、1人の女の噂で沸騰した。宋代の虚実の間を生きる人物達を描く表題作はじめ、書画博士米ふつを描く「潔癖」、異相の将軍狄青(てきせい)を描く「涅(すみ)」等、異色の秀作7篇!

すずしげな風の通る、亭の中である。風は、かすかな水の匂いを含んでいた。城市(まち)の西に広がる西湖の匂いだった。
「たしかに、柔福(じゅうふく)であったか」
「たしかに、柔福帝姫、いえ公主さまにおわしました」
宦官(かんがん)の黒衣をつけた小柄な人物は、きっぱりといいきった。彼の前には壮年の、こちらはすらりとした長身の男が後ろ手に手を組んでたたずんでいた。公の場ではないから簡素な袍(ほう)を身にまとっているだけだが、常人にはない品が挙措に漂っている。
「それともお上には、臣の言をお疑いでございましょうか。康王さまとお呼びしていた時代からお側近くにお仕えしている、この馮益(ふうえき)めの話を」
強気に出られると、たちまち帝は狼狽の色を見せた……――(本文から)


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書誌情報

紙版

発売日

1998年08月24日

ISBN

9784062093149

判型

四六

価格

定価:1,870円(本体1,700円)

ページ数

258ページ

初出

収録作品参照

収録作品

  • 作品名

    潔癖

    初出

    『季刊歴史ピープル』1995年春号

  • 作品名

    公主帰還

    初出

    『季刊歴史ピープル』1996年夏号

  • 作品名

    僭称

    初出

    『季刊歴史ピープル』1998年春号

  • 作品名

    芙蓉怨

    初出

    『季刊歴史ピープル』1997年夏号

  • 作品名

    贋作

    初出

    『季刊歴史ピープル』1998年新春号

  • 作品名

    白夫人

    初出

    『季刊歴史ピープル』1997年秋号

  • 作品名

    初出

    『季刊歴史ピープル』1996年春号

著者紹介