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ヨテイジカン

文芸(単行本)

芥川龍之介のみた漢詩の世界=中国と戦争という極限状況の狭間に、揺るぎない「性根」を求めて
上海租界を舞台に、スパイ事件に巻き込まれ時代に翻弄されながらも人間として、報道人としての矜持を貫き通した男と女の友愛のかたち
自分を探す記憶の旅

外からみるとリタは、男から男を渡り歩く節操のない女に思えた。が、寝起きを共にしてみると、リタは純粋な女だった。1つ部屋に暮しながら、2人の仲には何事も起きなかった。期待する思いはあったが、肩も胸も薄い、体を絞って咳をするリタをみていると、憐れが先に立つ。いつか、回復を待つ気になっていた。
……
そのうちリタの気持は穏やかに、落ち着いたのだろう。わたしたちは、抱きあって眠るようになった。わたしの腕を枕にして眠っていたリタが、ある朝目覚めて、こんなに深い眠りがあったのね、といった。わたしの自惚れだろうか。リタの生涯で、もっとも安らかな時期ではなかったか、と思う。――本文より


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書誌情報

紙版

発売日

1998年11月06日

ISBN

9784062093774

判型

四六

価格

定価:1,980円(本体1,800円)

ページ数

198ページ

初出

『群像』1998年6月号

著者紹介