揚輝荘、アジアに開いた窓

揚輝荘、アジアに開いた窓

ヨウキソウアジアニヒライタマドエラバレタリュウガクセイノヤカタ

知られざる、日本人とアジアの若者たちの交流!!
昭和初期、1人の財界人が築いた館(やかた)。そこには次代を担うアジアのエリートたちがいた。戦争の時代に、そこにはかけがえのない人間交流が!!

昭和のはじめ、東南アジアの留学生が随時在住したという揚輝荘は、いまも名古屋の一角に静寂を保ってセピア色のメセナともいうべき事実を無言のうちに伝えている。所在を確かめて面談した人々のうち、最年少で来日し貴公子として注目された留学生の生涯はかくて終わりを告げたから、当時を語れるのは内蒙古(うちもうこ)1人、中国2人、タイ4人の合計7人となった。彼らはそれぞれに戦争をくぐり抜け各国各様の変遷を生きて、その根底に日本語のみならず日本式思考の名残をとどめているかのように思われる。
青少年のころの来日をきっかけに人生を微妙なかたちで日本とかかわって生きた留学生も、これを迎えた側も、大半が鬼籍に入り、残る人々は夕映えの中で佇む年代となった。だが彼らが互いに、20世紀のアジアの年鑑にかけがえのない人間交流のページを残したことだけはまちがいない。――本文254ページより


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目次

序章 昭和初期のメセナ
第1章 内蒙古からの留学生
第2章 揚輝荘と伊藤家第15代祐民
第3章 タイからの留学生
第4章 中国からの留学生
終章 留学生の死

書誌情報

紙版

発売日

1998年11月17日

ISBN

9784062094290

判型

四六

価格

定価:1,650円(本体1,500円)

ページ数

254ページ

初出

『This is 読売』1997年1月号~12月号に発表されたものを大幅に加筆・修正しました

著者紹介