
薬子の京(上)
クスコノミヤコ
- 著: 三枝 和子

桓武天皇、圧倒的な人間の迫力
[薬子の変]の藤原薬子。
東宮を恋慕する母と娘との宿命、宮中の権謀!
いまの帝(桓武)が4年前即位なさったとき父種継は参議に抜擢され、興奮して口走ったものだ。
「さあ、わしにも運が向いて来た。これからは娘を入内させねば……」
薬子にはすでに縄主が通って来ていた。しかしいまの帝は大変な精力の持ち主で、身辺に侍っている采女たちには、昼間から下袴なしで白の表袴だけの簡略な服装をさせていらっしゃると聞く。気持ちが動いたとき、直ちにどこででも男と女のことをなさるためだ。
「お気に召せば、臣下の妻でも、お構いなしらしい」
そして暗に、縄主との関係は適当に切りあげるように仄めかした。
薬子は縄主が特に好きというわけではない。16歳のとき通ってきた男を同じ藤原式家の一族として、ふさわしい婿と周囲が認めた。それが今日まで続いている。――(本文から)
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書誌情報
紙版
発売日
1999年01月25日
ISBN
9784062095020
判型
四六
価格
定価:2,090円(本体1,900円)
ページ数
378ページ