
臨安水滸伝
リンアンスイコデン
- 著: 井上 祐美子

逃げる猫と岳飛軍の遺児の運命は?胸のすく痛快武侠活劇の秀作。
桂花かおる港市臨安(杭州)の二貴公子。巨魁秦檜(しんかい)に挑む!
臨安は刺激の強い街だった。白日賊といわれる詐欺や盗賊が常に横行して、扇情的な話題には事欠かなかった。「猫を、外へ出すんじゃないよ。絶対に、出すんじゃないよ」
その老人は、毎朝家を出る時に、かならず奥に向かってそう念をおした。
杭州が臨安と呼ばれるようになってしばらくたつが、住宅事情は悪くなるばかりで、その日暮しの庶民が城内に一軒家を持つなど、夢のまた夢。その老人も数階建ての家の1階の一部を借り、妻とふたりで暮していた。最初、同居人たちはその女を、老人の娘だと思っていた。それほど年齢が離れていたのだが、狭い家の内のこと、ふたりの会話は自然にはいってくる。女が北から避難してくる途中、家族と生き別れ、老人に救われて妻になったということまで、ひと月たたないうちに、その家の全員が知るようになった。
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書誌情報
紙版
発売日
1999年05月19日
ISBN
9784062096973
判型
四六
価格
定価:2,090円(本体1,900円)
ページ数
382ページ
初出
序章から第二章までを『季刊歴史ピープル』1999年新春号に発表、第三章以降は、書き下ろし