
楽しみの日々
タノシミノヒビ
- 著: 大庭 みな子

病いに倒れてのちの家族や友人との心の交流。
「群像」連載時から大きな反響を呼んだ、脳出血に倒れた筆者を支える家族や友人との交流を綴った日記。記憶のうちから甦る情景や夢、童謡が深い感動を誘います。
7月13日から夢うつつの中に漂っていた。その日の朝に倒れ、夜には完全に意識を失って皮膚だけが反応を示したそうだ。深夜の手術のおかげで翌朝意識を取り戻した私は「机の上に「七里湖」の原稿が出来上がっているから群像の編集部に渡して」と家人に言ったそうだ。
その後芥川賞や紫式部賞の選評のコメントをしたりしてから再び意識は混濁して、もっぱら夢の中にいたようだが記憶は一向に定かではない。脳死体験のようなものは何もなく、ただただ自分の頭はどうもおかしいなと思いながら何か文学のことを喋っていたような覚えがないでもない。
うわごとに付き合った家人は、私の脳の奥底をかいま見たような気になって、ただただ驚き呆れ、そして憐れに思ったと言う。決して仕事の鬼だの、美談だとは言ってくれない。――「まほろしの七里湖」より
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書誌情報
紙版
発売日
1999年09月17日
ISBN
9784062097390
判型
A5
価格
定価:2,200円(本体2,000円)
ページ数
222ページ
初出
収録作品参照
収録作品
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作品名初出
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作品名
まぼろしの七里湖
初出
『群像』1996年10月号
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作品名
楽しみの日々
初出
『群像』1997年5月号~1999年5月号(1999年1月号休載