
はなうた巡礼
ハナウタジュンレイ
- 著: 山本 容子
山本容子の少女時代
童謡をくちずさめば、記憶の底から幼い日々がめぐりくる。なつかしい童謡を銅版画で表現し、エッセイを添えた画文集。
言葉より先に音符が読める子にしたいという母の希望で、2歳4か月から私は童謡を習っていた。そして6歳の6月6日からは、祖母の夢をかなえるべく日本舞踊のおけいこにもかよいはじめた。そう、この日から私は現在に至る和洋折衷の精神を生きることになったのである。この写真は当然モノクロだが、洋服はオレンジ色だったことをはっきり覚えている。そしてちょっと厚めのウール生地だったことも。髪型に注目してもらいたい。くるんくるんのカールは、この日の早朝、母がこてで丸めてくれた。熱さと匂いも覚えている。ああそれからこのリボン。祖母が七五三の着物用のリボンを最後に頭にのせてくれたのだった。この冬の日、私ははじめてのレコーディングのために歌った。――山本容子
縄とび、まりつき、石けり、「花いちもんめ」というのもあったなぁ。祖母に教えてもらった「おじゃみ(お手玉)」という遊びもあった。祖母お手製の「おじゃみ」が美しくって会うたびに新しい「おじゃみ」を欲しがったものだった。これらの遊びには必ず歌がついていた。耳からおぼえた歌の節と歌詞は身体にしみこんだから今でも歌える。──(本文より)
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書誌情報
紙版
発売日
2000年04月20日
ISBN
9784062101936
判型
AB
価格
定価:1,760円(本体1,600円)
ページ数
32ページ
初出
本書は、「ミセス」1999年1月号~12月号の連載に、加筆したもの。