歴史認識と小説―大江健三郎論

歴史認識と小説―大江健三郎論

レキシニンシキトショウセツオオエケンザブロウロン

文芸(単行本)

産まれたばかりの大江小説の読者のために

大江小説は“歴史”をどう認識しているのか?
そもそも“歴史”を認識するとはどのようなことなのか?
いま最も注目される文芸評論家の傑作評論。

「天皇制を再編成しようとする人々の言葉が、歴史的事実に対する思考と判断を停止させ、真実を歪める方向で、意図的に組織されていった20世紀最後の年に、私自身は、明治以後のこの国の歴史を、世界的な帝国主義と植民地主義の力関係の中で認識しなおす作業をしていた。(略)
同じ1つの歴史上の出来事を、一国中心主義、とりわけ自国中心主義的に認識するのか、それとも複数の矛盾、敵対する力関係の中で認識するのかによって、その見え方や意味が決定的に変わることに、私はこの作業の中で否応なく気づかされることになったのである。(略)
その意味で、この作業を終えた直後から、「歴史認識と小説」という題名で、大江健三郎の小説とエッセイを読みなおし、私自身のこの国の近代から現在にいたる歴史認識を批判的に検証しなおすことが、必然となったのである」――(「あとがき」より)


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目次

第1章 固有名と星座――『取り替え子チェンジリング』を中心に――
第2章 百年のみなし子――『万延元年のフットボール』を中心に――
第3章 千年の交渉者――『同時代ゲーム』を中心に――
第4章 「蹶起」と「根拠地」――『懐かしい年への手紙』を中心に――

書誌情報

紙版

発売日

2002年07月03日

ISBN

9784062113045

判型

四六変型

価格

定価:2,530円(本体2,300円)

ページ数

318ページ

初出

『群像』2001年5月号~2002年1月号

著者紹介