猫のシッポ

猫のシッポ

ネコノシッポ

府中刑務所には、なんと10匹以上のゴロニャンが棲んでいました。

なぜか女房気取りだった猫、人間と同じ避妊手術をした猫、
バンカーをトイレ代わりにする猫、何も言わず去っていった猫……。
猫語を喋る安部譲二が語る「愛しのゴロニャン」

すずめちゃんが、「この猫、バカじゃないかしらん。検事に起訴もされず、判事に判決も言われていないのに、何で刑務所なんかに棲んでいるんでしょ」きっと、究極のマゾなのだと看守に、オネェ言葉で話し掛けていました。茶と白のぶちのゴロニャンは、「この猫……」と言ったのが聞こえた時だけ、僅かに耳を向けただけで、春の陽を浴びて悠々と歩み続けます。猫を可愛くないと思ったのは、後にも先にも府中の官猫だけでした。けど、考えてみれば猫に限らず塀の中に棲みついている奴は、看守も懲役も皆、可愛くなんかないのです。――本文より


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書誌情報

紙版

発売日

2003年09月20日

ISBN

9784062120425

判型

四六

価格

定価:1,760円(本体1,600円)

ページ数

274ページ

著者紹介