
洛中洛外
ラクチュウラクガイキヨハラノブカタノツマ
- 著: 千 草子

室町言葉の高貴なる女人の生命感!
清原の館から京の街中へ出奔した翠子の運命の転変を描く秀作。
「翠子殿」
兼満の声のみ響いた。
「私はそなたを殺しはせぬ。なれど、あの絵師と男と女としてのそなたを見とうはない」
「私の字を生かし、絵師殿の絵を生かすには、男と女は要りませぬ。ただ、限りなく相手をゆるす心がなければならぬと覚悟しておりまする」
「私の色身はほろんでも、執心は残る。そなたと絵師殿を男と女としては結びつけはさせぬ。恨まれるか」
「いいえ、亀女の最期のさとしでもありました。絵師殿の洛中洛外図をくもらぬ色彩で残すには、絵と字が清らで交わらぬ方がよいと。(略)」
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書誌情報
紙版
発売日
2003年12月10日
ISBN
9784062121590
判型
四六
価格
定価:2,420円(本体2,200円)
ページ数
314ページ
著者紹介
著: 千 草子(セン ソウコ)