黒苺館

黒苺館

ブラックベリーヤカタ

文芸(単行本)

兇悪の庭にたちこめる死の香り!
戦慄の心理ホラー、美人作家が描く母と娘の葛藤劇。

バス停から続く緩い上り坂が尽きると、やがて古びた煉瓦塀が現われた。樹木の向こうに、矢内原邸の黒い切妻屋根が見える。楡の葉が道に濃い影を落としている場所で、俊子は塀にもたれ、痛む腰を伸ばした。敷地が辺りいったいの住所区画を占有するこの矢内原の家は、先々代の主が昭和の初期に、高名な建築家に依頼して建てたものだという。木組みを外側に見せたスクラッチ壁と大小5つの切妻屋根の重なり、応接間の一部を八角形状に突出させた外観は時を経ても美しく、辺りを威圧する森厳さを湛えている――。(娘の)りさ子が寝ているのはどの部屋だろうと、俊子は2階の窓を仰ぎ見た。


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書誌情報

紙版

発売日

2004年01月25日

ISBN

9784062122092

判型

四六

価格

定価:1,870円(本体1,700円)

ページ数

284ページ

著者紹介