
北国の雁
ホッコクノカリキヨハラノブカタノツマ
- 著: 千 草子

大儒者清原宣賢(のぶかた)の妻の生涯!
みずみずしい室町ことば、自然と共振れする室町ごころ。高貴なる女人翠子を描く秀作。
はかなき此の世を過ぐすとて
海山かせぐとせし程に
万の仏に疎まれて
後生我が身をいかにせん
生涯で何一つ、うしろめたいことのない者はいない。それを懺悔する歌をうたうことで、同じ思いで冥界に旅立った人を救うことができる。それを信じるからこそ、念仏とともに歌いつづけるのである。翠子の腰からも、カラコロリンと鈴の音が唱和していた。雪の冷たさも、夜の冷えこみも翠子には感じられない。去りゆく貞信たちの跡をしたい、一度だけ「さらば」を言うために山道をたどっている気がする。――(本文から)
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書誌情報
紙版
発売日
2004年03月05日
ISBN
9784062122580
判型
四六
価格
定価:2,420円(本体2,200円)
ページ数
262ページ
著者紹介
著: 千 草子(セン ソウコ)