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コイン・トス
コイントス
- 著: 幸田 真音

ニューヨーク、同時多発テロが切り裂いた男と女。コインの裏表に託した2人の運命は……。
9・11すべてはそこから始まった。
ベストセラー『日本国債』『代行返上』の著者が挑んだ新境地。切ない大人の恋の物語。
作家になるずっと前、人生の一時期を、私は国際金融市場の現場で過ごした。30代という、おそらくは自分がもっとも元気で、強くいられた時代だった。あの世界貿易センタービルは、そんな私の過去の象徴でもあった。2001年9月11日、ニューヨーク時間、午前8時48分……。くずれていくビルの姿を見つめながら、私は呆然としていた。あそこには、いまも仲間たちがいる。いくら叫んでも、ただ無抵抗に、すべてはあっけなく消えていく。その夜から筆はまったく進まなくなった。自分の不甲斐なさに、つくづく嫌気がさし、乗り越えるしかないと思ったとき、目を逸らさずにあの事件と正面から向き合えという声を聞いた気がした。9・11の事件を背景に、物語を書いてみよう。それは、私にとってまさに、答えを天に託して、コインを投げる行為に等しかった。――<あとがきより>
書誌情報
紙版
発売日
2004年06月17日
ISBN
9784062123990
判型
四六
価格
定価:1,760円(本体1,600円)
ページ数
294ページ
初出
「コイン・トス」『小説現代』’01年11月号、「グラウンド・ゼロ」『小説現代』’03年2月号、「ふたつの顔」『小説現代』’03年5月号、「冴子(初出時「ふたつの顔(2)」を改題)『小説現代』’03年9月号、「迷い道」『小説現代』「11番街の女」『小説現代』’04年2月号。