天府 冥府

天府 冥府

テンプメイフ

文芸(単行本)

「飢えて死ぬとその体は透明になって内臓まで見えるのだ」
生きることへの限りない愛と哀しみが少女を襲った!人種の坩堝(るつぼ)・天国と地獄の旧満州の街。生と死の狭間で美しい日本の少女はどう生きたか。

わたしは恐る恐る墓穴を覗いた。わたしがボタンを取った服を着た父らしいものが赤黒く潰れていた。肘と股のところに蛆が白く固まって蠕動していた。(中略)太陽に晒されて蛆たちは困っている。父も困っている。梅干しのように目鼻がおぼろに崩れた顔はあまり眠りすぎて溶け出しているようだった。でもまだ父は夢を見ているように見える。長い恐ろしい夢のようだ。ここにいる私たちは父の夢の中の登場人物ではないのか?――<本文より>


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書誌情報

紙版

発売日

2005年07月09日

ISBN

9784062129558

判型

四六

価格

定価:1,650円(本体1,500円)

ページ数

198ページ

初出

「天府」『群像』’03年6月号、「冥府」書き下ろし。

著者紹介