
天使がいた三十日
テンシガイタサンジュウニチ
- 著: 新堂 冬樹

上戸彩さん推薦
素敵な出会いと哀しい別れ。人生の中で2回もこの経験をした主人公に、今度は素敵な出会いだけをしてもらいたいですね。心温まるストーリーに涙と感動が止まらない。私も聴いてくれる人の心が安らいで、とても優しい気分になれる曲、“誰かそばで見守ってくれている気がするような歌”を歌っていきたいです。
その愛は、雪のように白く儚く、しかしそれ故に、心に沁みわたる。
メリー・クリスマス。あのときの夏乃は、これから何回……いいや、何十回もそのセリフを口にできると信じて疑わなかったことだろう。それは、私も同じだった。微かに萌芽(ほうが)の兆しをみせていた生命の木が、ふたたび、内部から朽ち果ててゆく……。衣擦(きぬず)れの音に続いて、背後に気配を感じた。私は、振り返った。万年床の上で、四肢を震わせながらマリーが懸命に立ち上がった。半開きに開いた口からだらりと舌を伸ばし、荒い息を吐きながら、潤む瞳で私を見上げていた。私に向かって足を踏み出そうとしたマリーの躰が、ぐらりと揺れた。「おい、マリー!」静寂を切り裂く絶叫とともに、マリーがスローモーションのように崩れ落ちた。――<本文より>
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書誌情報
紙版
発売日
2005年06月22日
ISBN
9784062129640
判型
四六
価格
定価:1,540円(本体1,400円)
ページ数
250ページ
初出
『小説現代』2004年2月号~2005年4月号に連載された作品を改題し、加筆・修正