日曜農園

日曜農園

ニチヨウノウエン

文芸(単行本)

ようこそいらっしゃいました。あなたは94567人目のどてかぼちゃです。

忽然と姿を消した父が残した畑とホームページ。萌は父をさがして、農園に立った。しずかな悲しみと再生の物語。

……夜の畑は、ずいぶん様子が違う。月光を吸い込んだハクサイが足下を冷艶に灯し、日中は光そのものである野菜たちが、影になって眠っている。噂をするように葉が擦れて、風は足音のようだった。昼の農園で見る野菜は食べるもの、夜の農園で見る野菜はひそかに生きるもののようだ。
ツルタ家のサツマイモたちは夜空にむかって元気よく葉をひらいていた。長生きするんだよ。萌は声をかけながら葉を撫でた。――<本文より>


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書誌情報

紙版

発売日

2007年10月05日

ISBN

9784062131223

判型

四六

価格

定価:1,540円(本体1,400円)

ページ数

134ページ

初出

『群像』2004年5月号。第131回芥川賞候補。

著者紹介