
水月
ミヅキ
- 著: 出口 汪

「30年も前から私は、この魂を揺さぶる小説が書きたかった」
記憶をたぐれば男と女は「火の山」で小さい頃に出会っていた……
肉体と想念、生と死を描く、大型新人作家デビュー作!
「僕の腕の中には、意識を失ったような、青白い表情の水月(みづき)がいた。長い黒髪がばさりと垂れ、それが妖しい色気を醸し出していた。僕はもう一度強く抱きしめた。でも、どんなに抱き合っても、2人は1つになれないのではないか。僕は水月の体の透明さに改めて驚いた」
「天上の月は水面に映って水月となる。天に昇ることは、すべてが上下に逆転する水面において、それはそのまま水の底に沈むことになる(中略)この世で幸せを得ることが不可能なら、水の底に沈むしか手だてがないではないか」――<本文より>
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書誌情報
紙版
発売日
2006年10月15日
ISBN
9784062136495
判型
四六
価格
定価:1,760円(本体1,600円)
ページ数
330ページ