ハルビン駅へ 日露中・交錯するロシア満洲の近代史

ハルビン駅へ 日露中・交錯するロシア満洲の近代史

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満洲の中心都市・ハルビン。多くの日本人にとっては、伊藤博文が暗殺された都市として記憶されますが、それだけではありません。日本、ロシア、中国を中心に、波瀾の近代史を繰り広げた舞台でもあります。
始まりは、ロシアのアジア進出にあります。ロシアは東清鉄道を建設し、アジアの不凍港まで鉄道を開通させねばならなかった。その調査の過程で発見されたハルビンは、やがて東清鉄道建設の基地となり、ロシアの植民地となります。
ロシアの名物蔵相ウイッテの思惑、軍と鉄道会社の利害対立など、ハルビンの発見から植民、そして繁栄と混乱の社会と歴史が綿密に描き出されます。いわば、ヨーロッパとアジアの思惑、国際関係のるつぼとして、ハルビンはあったのです。
そこでは、中国人、日本人のみならず、ユダヤ人のコミュニティも形成され、「最も自由な国際都市」という側面もそなえてゆきます。
しかしながら、歴史は、このリベラルな都市を、そのまま許すことはありません。やがて日露戦争に突入。そして、中国による奪還と歴史はうねっていきます。
そうでありながら、では、鉄道建設で栄えたハルビンはなぜ、リベラルな国際都市の可能性を持つことができたのか。
本書は、ロシア側の未公開資料など、貴重な史料を広汎に発掘し、壮大なスケールで描く、満洲の近代史です。

加藤陽子(東大教授)さんが、「ロシアにとっての『坂の上の雲』が今ここに」と大絶讃! まれに見る本格歴史書を、堪能してください。


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目次

まえがき ハルビン前史――日露善隣の長い十九世紀
第一章 それは鉄道からはじまった
第二章 日常的な省庁間の争い
第三章 満洲植民――政策、成果、反応
第四章 戦争、革命、政治―― 一九〇四年から一九〇八年のハルビン
第五章 彼ヲ知リ己ヲ知ラバ――国境地域のロシア東洋学
あとがき ハルビンと日本――残照の中の輝き

書誌情報

紙版

発売日

2014年10月07日

ISBN

9784062139984

判型

四六

価格

定価:2,750円(本体2,500円)

ページ数

450ページ

著者紹介

著: ディビッド・ウルフ(ディビッド・ウルフ)

1960年ニューヨーク生まれ。ハーバード大学ロシア・フランス歴史・文学科卒。カリフォルニア大学バークレー校にて博士号取得(歴史学・政治学) プリンストン大学で教鞭をとった後、ウッドロー・ウィルソン研究所国際冷戦史プロジェクトのディレクター・上級研究員を務める。2006年より、北海道大学スラブ研究センター教授。 専攻は、ロシア史、北東アジアの国際関係史。 主な著書に、To the Harbin Station ;The Liberal Alternative in Russian Manchuria,1898-1914(本書),Rediscovering Russia in Asia:Siberia snd the Russian Far East,共著に、The Russo-Japanese War in Global Perspective:World War Zeroなどがある。日本語訳された論文も多数。

訳: 半谷 史郎(ハンヤ シロウ)

1968年生まれ。大阪外国語大学ロシア語科卒。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。現在、愛知県立大学准教授。 訳書に、テリー・マーチン『アファーマティヴ・アクションの帝国:ソ連の民族とナショナリズム、1923-1939』(明石書店)など。