
白暗淵
シロワダ
- 著: 古井 由吉

現代文学最高峰の作家・古井由吉、最新連作短篇小説集
言葉が用をなすその究極へ、著者の新たなる到達点。
女教師はちょうどこちらへ背を向けて、黒板に「暗黒」と細い指で大書して「くらき」と仮名を振り、光は暗黒に照る、而して暗黒は光を悟らざりき、と暗誦した。(中略)
その夜になり、自分はたしかに女教師の視線をまともに受けて、もうすこしのところでうなずきそうなまでになったけれど、相手の口にする闇という言葉に反応しながら、
内には闇らしいものも見えなかった、と坪谷は訝った。闇もなければ光も射さず、ただ白かった。いよいよ白くなっていくようだった。
--「白暗淵」本文より
静寂、沈黙の先にあらわれる、白き喧噪。
さざめき、沸きたつ意識は、時空を往還し、
生と死のあわいに浮かぶ世界の実相をうつす。
言葉が用をなすその究極へ、著者の新たなる到達点。
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書誌情報
紙版
発売日
2007年12月08日
ISBN
9784062144599
判型
A5
価格
定価:2,420円(本体2,200円)
ページ数
294ページ
初出
収録作品参照
収録作品
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作品名初出
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作品名
朝の男
初出
『群像』2006年4月号(「白い男」改題)
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作品名
地に伏す女
初出
『群像』2006年5月号
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作品名
繰越坂
初出
『群像』2006年6月号
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作品名
雨宿り
初出
『群像』2006年8月号
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作品名
白暗淵
初出
『群像』2006年9月号
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作品名
野晒し
初出
『群像』2006年10月号
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作品名
無音のおとずれ
初出
『群像』2006年12月号
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作品名
餓鬼の道
初出
『群像』2007年1月号
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作品名
撫子遊ぶ
初出
『群像』2007年2月号
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作品名
潮の変わり目
初出
『群像』2007年4月号
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作品名
糸遊
初出
『群像』2007年5月号
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作品名
鳥の声
初出
『群像』2007年6月号