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カソウスキの行方
カソウスキノユクエ
- 著: 津村 記久子

第138回芥川賞候補作
好きになったということを仮定してみる
郊外の倉庫管理部門に左遷された独身女性・イリエ(28歳)は日々のやりきれなさから逃れるため、同僚の独身男性・森川を好きになったと仮想してみることに……
「恋愛はすごいなあおい」
そう口に出して言ってみるが、棒読みだった。気を取り直して、あやかりてー、とごろんと寝返りを打ってみたが、どうしてもやる気のある人の口調にならない。とりあえず、今満足に意思の疎通ができる男性の数を数えてみるが、本社の連中は皆既婚者で、部長にいたっては孫までいる。こっちではコンパなどなく、藤村は悪くないかもしれないがやはり結婚しているし、なまじ付き合っても殴り合いの喧嘩になりそうな予感がする。
「消去法かあ」
森川君かあ、と言うところを、直前で置き換えた。――(「カソウスキの行方」より)
同時収録「Everyday I Write A Book」「花婿のハムラビ法典」
書誌情報
紙版
発売日
2008年02月03日
ISBN
9784062145374
判型
四六
価格
定価:1,540円(本体1,400円)
ページ数
154ページ
初出
収録作品参照
収録作品
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作品名初出
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作品名
カソウスキの行方
初出
『群像』’07年9月号
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作品名
Everyday I Write A Book
初出
『小説すばる』’06年7月号
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作品名
花婿のハムラビ法典
初出
『群像』’06年5月号