
ctの深い川の町
シーティーノフカイカワノマチ
- 著: 岡崎 祥久

「何もかもが嫌だ」40男が遁走した先は、急行で40分のビミョーな郊外(ふるさと)。
誰も待つ人のない故郷で、就いた仕事は<ノーブル交通>の運転手。“貴族風”の制服に身を包み、低スピードで走る。この市(まち)の地理は知ってる。が、郷愁は、ない。
第139回 芥川賞候補作
伊佐山は、中学で同級生だった男である。<ノーブル交通>に面接に行ったら、この男が出てきた。……これをコネと呼ぶのかどうかは知らないが、ともかくも不採用にはならなかった。わたしは、だいぶ、投げやりな態度で面接に臨んでいたのである。荷物が燃えたので普段着であった。もし何か言われたら、赤帽炎上をネタにして弁明するつもりであった。あわよくば温情によって採用されることも、いくらかは当て込んでいた。もちろん、うれしくなるほど惨めに追い払われることも、また。――<本文より>
- 前巻
- 次巻
書誌情報
紙版
発売日
2008年08月10日
ISBN
9784062149419
判型
四六
価格
定価:1,320円(本体1,200円)
ページ数
114ページ
初出
『群像』2008年6月号