恋する原発

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恋する原発

コイスルゲンパツ

文芸(単行本)

【内容紹介】
あなたは、この小説に、賛成ですか、反対ですか?
―表現の自由をかけた過激な言葉の羅列。原発事故がもたらした日本の混乱に鋭く切り込み、私たちが人間であるために、そして、人間である意味を問う、愛と悲しみの超エンターテインメント―

東日本大震災の被災者たちを救うため、チャリティAVを作ろうと制作スタッフが立ち上がった。その前に立ちはだかったのは現代ニッポンのモラルと言葉の厚い壁だ。制作会社の社長も、監督も、自分自身の人生と生活をかけて、プロジェクトに挑む。そして、元72歳のAV女優・ヨネさんの福島で行われた葬儀で、スタッフは姪のヨシコさんに再会する。郷里は放射能汚染で帰れない。
そこに、近所の小学生サオリちゃんがやってきた。ヨシコさんとサオリちゃんは愛の問答を開始する。
 過激な表現のなかに優しい詩情が入りまじるストーリーと、想像を超えた美しい結末が感動を呼ぶ渾身の長篇小説。放射能に汚染された時代に、表現の自由をかけて挑んだ現代日本小説の勇気と愛!


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書誌情報

紙版

発売日

2011年11月19日

ISBN

9784062173377

判型

四六

価格

定価:1,760円(本体1,600円)

ページ数

290ページ

初出

『群像』2011年11月号

著者紹介

著: 高橋 源一郎(タカハシ ゲンイチロウ)

 1951年1月1日生まれ。小説家、評論家。1980年に「すばらしい日本の戦争」で群像新人賞に応募するも、編集部が騒然となる過激な表現のため、最終選考で落選。だが、その才能を惜しむ担当編集者に勧められ、翌年「さようなら、ギャングたち」を群像新人長篇賞に応募、優秀作になる。講談社の片隅にある小さな会議室で編集部と著者だけのささやかな授賞式で祝福を受ける。「すばらしい日本の戦争」は、その後、「ジョン・レノン対火星人」とタイトルをかえて刊行され、70年代の政治的青年の希望のない悲しみを描いたと注目される。  80年代を通して、斬新な新文学の旗手として活躍、「虹の彼方に」「ペンギン村に陽が落ちて」「優雅で感傷的な日本野球」などをつぎつぎと発表。だが、91年の湾岸戦争反対声明への参加後、小説執筆はしばし沈黙。  97年に「ゴーストバスターズ」を初出発表時から5年を費やし刊行、再び活動開始。この間の渋滞は、70年代の政治的失語症状況の中で書かれたデヴュー作の中で、ギャングたちの言う言葉「まっ白まっ白まっ白まっ白まっ白まっ白まっ白まっ白まっ白まっ白まっ白まっ白まっ白まっ白まっ白……。」を想起させる。  99年、初めてAV制作者を主人公に「あ・だ・る・と」を刊行。ついで、明治の文豪たちにテレクラ通いさせるなど自由奔放な「日本文学盛衰史」を刊行。(「官能小説家」「君が代は千代に八千代に」「ミヤザワケンジ・グレーテスト・ヒッツ」がつづく。)  2001年9月、ニューヨークでのテロが起きると、「メイキングオブ同時多発エロ」の連載を開始。AV監督が、テロに見舞われた世界をエロによって救うというモチーフを展開。だが、この小説は未だ単行本化はされていない。  3月11日の東日本大震災、原発事故ののち、群像11月号に「恋する原発」を執筆。発表前から、ツイッターで超問題作と話題沸騰。