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フッサール心理学宣言 他者の自明性がひび割れる時代に
フッサールシンリガクセンゲンタシャノジメイセイガヒビワレルジダイニ
- 著: 渡辺 恒夫
「私が私であること」「他者が存在すること」がわからなくなるという、多くの人が幼児期あるいは少年期に体験する「独我論的体験」。フッサール心理学はそれを正常な発達過程の一階梯ととらえ、その体験の内的構造を分析すべく現象学を援用して練り上げられた技法である。
現代は独我論的体験や独我論者への「淘汰圧」が弱まった時代である。
当たり前のこととしてあった「私が私であること」「他者が存在すること」が、ある日突然わからなくなってしまうという眩暈に似た感覚。それは疑われることのない類的存在としての自己の自明性に亀裂が走ることによって引き起こされる。
かなりの人の幼少期に見られるこの体験を正常な発達過程の一階梯と捉え、その内的構造を解明するために、フッサール現象学に基づいた新たな心理学がここに提唱される。もともと現象学はその成立からして心理学への方向性を持っていたのだった。
<フッサール心理学>は、エポケー、現象学的還元という現象学の概念を援用し、自我体験・独我論体験の解明や、それら体験から出発したユニークな芸術家・科学者の世界観の分析のために、フッサールを読んだことがなくとも誰にでも使うことができる技法として作り上げられたものである。
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目次
第一章 世に棲む独我論者──究極孤絶を生きる人々
第二章 「私はなぜ私なのか」──六歳にして自分を神とする教義を発明した「エミリー」
第三章 日常世界の構造と自明性の裂け目──日本での「私は私だ!」体験調査と木村敏の現象学的精神医学
第四章 ここで念のため、現象学超入門
第五章 フッサール心理学への道──『ブリタニカ草稿』から「事例エミリー」の現象学的分析まで
第六章 ブランケンブルク、自閉症スペクトラム、発達性エポケー
第七章 幼少期に心理的に実在した「フッサール世界」──哲学的フィクションでも精神病理的妄想でもなく
第八章 フッサール世界からの世界観発展──エックルス、稲垣足穂、オウム元信者、シュレーディンガー
第九章 第二の誕生・現象学的反抗・自己事例W・T──人と人との間の世界を現象学はそれ以上遡れない?
書誌情報
紙版
発売日
2013年02月22日
ISBN
9784062178662
判型
四六変型
価格
定価:1,980円(本体1,800円)
ページ数
274ページ
電子版
発売日
2013年03月22日
JDCN
0621786600100011000I
著者紹介
京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専攻は心理学・科学基礎論。高知大学、東邦大学教授を歴任。現在明治大学講師。 「夢と睡眠環境の脳波を用いた研究」「自我体験の生涯発達心理学」「心理学の哲学」などを研究テーマとする。