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放射線を浴びたX年後
ホウシャセンヲアビタエックスネンゴ
- 著: 伊東 英朗
放射能は、確実にその牙を人間に対してむくことになる。数多いビキニの被ばく者は、自らの死をもって「ただちに影響はない」被ばくの「その後」を伝えている。世界に発信すべき、犯罪的な「ヒバク」とその隠蔽の歴史。
今からちょうど60年前。
そしてあの3.11、福島第一原発の事故から遡ること57年前。
1954年、南海のビキニ環礁で、アメリカによる水爆実験が6回にわたり行われた。
ここでの被ばくは、有名な第五福竜丸だけではなかった。
長きにわたり隠蔽されていた、もう一つの、そして甚大な被ばく――。
この海域で何も知らずに操業していた、数多くのマグロ漁船。
その乗組員が大量の死の灰を浴びていたのだ。
そして屈強な海の男たちは、やがて40代、50代の若さで癌や心臓病を発症し、次々と亡くなっていった……。
その実態を明かすべく、高知県の高校教師と生徒たちが
当事者に聞き取り調査を続けていたことを知ったテレビディレクターは、
8年にわたってその成果を取材し映像化。
焼き場で夫の遺骨を拾った妻は
「他の人の骨はすっきり残っちょるけん、うちのお父さんのはぐちゃぐちゃになっとった」
と語る。
「(被ばくと健康被害について)ひとことでも言ったらここでは生きていけんかった。
あん時代、日本は石炭とサカナで立て直すほかなかったけん」
「いっつの時代も、損をするのは弱い者ばっかりよ」
夫を亡くした妻たちが絞り出す言葉。
200万ドルと引き替えに真相は隠蔽され、
遺族たちは大黒柱の死について語ることも許されなかった。
この犯罪的な「ヒバク」の全貌解明に挑み、絶賛を集めた映画
『X年後』を撮影ディレクター自らが執筆し書籍化。
「ただちに健康に影響はない」。
その「ただちに」から「X年後」、何が起こるかを読者は知ることになる。
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目次
序章 一九五四年に何が起こったか
第一章 初めての調査報道
第二章 沈黙を破った生存者たち
第三章 機密資料と幻の資料
第四章 それでも撮り続ける
終章 「3・11」も「ビキニ」も終わらない
あとがき
書誌情報
紙版
発売日
2014年11月27日
ISBN
9784062181631
判型
四六
価格
定価:1,760円(本体1,600円)
ページ数
234ページ
電子版
発売日
2015年03月27日
JDCN
0621816300100011000E
著者紹介
伊東英朗(いとう・ひであき、南海放送ディレクター) 1960年愛媛県生まれ。 1993年からビデオアーティストとして、バンクーバー国際映画祭、ベルリンビデオフェスト、イギリス短編映画祭など海外映画祭で招待上映を重ねる。 2002年からはドキュメンタリー番組制作を開始、ハンセン病問題を掘り下げた『人間・塔和子』『海を渡る詩』など多くのドキュメンタリーを制作。日常の幸せを素朴に描いた『一片の命』は日本民間放送連盟賞で優秀賞を受賞。 2004年から取材を始めた太平洋核実験による被ばく問題では、『わしも死の海におった』で、「地方の時代映像祭」グランプリ、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞を受賞。 本書のもととなった、一連の取材の集大成となる映画『放射線を浴びたX年後』は2012年の全国公開から全国200ヵ所以上で上映されるなど多大な反響を集め、同年のキネマ旬報ベストテン入り、ギャラクシー賞報道活動部門大賞など、数多くの賞を受賞。現在も各地で上映が続いている。