
なぜなら雨が降ったから
ナゼナラアメガフッタカラ
- 著: 森川 智喜

野崎は高校を卒業して一人暮らしを始めた。ある雨の日「Yuregi Detective Office」と看板がある部屋の前で、女の人が一人で煙草を吸っていた。「あの、もしかしてここの事務所の方ですか」「そうよ」「探偵さん……ということですか?」「そうなるわね」「すごいですねえ。あの。探偵さんってことは、推理とか、するんですか?」「まあね。あなた、もしかして最近、新しく靴を買ったんじゃない?」
野崎は高校を卒業し、アパートの三〇一号室で一人暮らしを始めた。ある雨の日、「Yuregi Detective Office」と看板がかけられた二〇二号室の前で女の人が一人で煙草を吸っていた。
〈探偵さんか? それとも、依頼人さん?〉
野崎はつい一言、
「あの、もしかしてここの事務所の方ですか」
と尋ねた。
「そうよ」
「探偵さん……ということですか?」
「そうなるわね」
「すごいですねえ」
何がすごいのかは分からないが、珍しい職業というものは、その存在だけで何やらすごいように思えるものだ。
「あの。探偵さんってことは、推理とか、するんですか?」
野崎は、冗談めいた質問を投げた。探偵ってどんなお仕事なんですか、という質問でもよかった。少々掘りさげたかったのである。
問いを受けた彼女は、煙をくゆらせつつ、答えた。
「まあね」
そして、なんでもない調子でつけ加えた。
「あなた、もしかして最近、新しく靴を買ったんじゃない?」
なんとゆかしき“ホームズ流!”
かくして大学生の野崎と、雨女探偵・揺木茶々子(ゆれぎちゃちゃこ)の探偵活動がはじまる。
読むと中毒になるモリカワミステリ、どうぞご堪能あれ。
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目次
第一話「雨女探偵」――「エソラ vol.15」掲載の「雨女探偵にご注意」を改題
第二話「てるてる坊主」――「小説現代2013年12月号」掲載の「雨女探偵の夏」を改題
第三話「雨天決行」――書き下ろし
第四話「雪女探偵」――書き下ろし
第五話「狐の嫁入り」――書き下ろし
書誌情報
紙版
発売日
2014年09月17日
ISBN
9784062191265
判型
四六
価格
定価:1,595円(本体1,450円)
ページ数
298ページ
電子版
発売日
2014年12月26日
JDCN
0621912600100011000K
初出
収録作品参照
収録作品
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作品名初出
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作品名
雨女探偵
初出
「エソラvol.15」掲載の「雨女探偵にご注意」を改題
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作品名
てるてる坊主
初出
「小説現代2013年12月号」掲載の「雨女探偵の夏」を改題
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作品名
雨天決行
初出
書き下ろし
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作品名
雪女探偵
初出
書き下ろし
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作品名
狐の嫁入り
初出
書き下ろし
著者紹介
1984年、香川県生まれ。京都大学理学部卒業。京都大学推理小説研究会出身。2010年、『キャットフード 名探偵三途川理と注文の多い館の殺人』(講談社)でデビュー。2014年『スノーホワイト 名探偵三途川理と少女の鏡は千の目を持つ』(講談社)で本格ミステリ大賞を受賞。デビュー2作目での本格ミステリ大賞受賞は史上初となる。 その他の著作に『一つ屋根の下の探偵たち』『踊る人形 名探偵三途川理とゴーレムのEは真実のE』『半導体探偵マキナの未定義な冒険』がある。