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ルンタ
ルンタ
- 著: 山下 澄人

人間という暮らしにうんざりしたというわたしは、それでも自殺はせずに「わたし」と呼ぶ装置をもう少し観察してみたいと望み、家を出て山へ向かうことに。ユという女性との記憶と死んだはずの友人の中西を道連れに山を目指し、吹雪の中で出会った黒い馬「ルンタ」に乗り、さらに深い雪の中を進んでいく。生と死、現在と過去を行き来する人々が、人間の意識や時間の虚構を疑わせながらもまた確かな生を感じさせる。保坂和志氏絶賛!
1996年より劇団FICTIONを主宰。2011年より小説を発表しはじめ、2012年「ギッちょん」で芥川賞候補、同年初の創作集『緑のさる』で野間文芸新人賞を受賞。2013年「砂漠ダンス」で芥川賞候補。同年、「コルバトントリ」で芥川賞候補となる。今最も注目される作家、山下澄人氏最新作。
人間という暮らしにうんざりした、というわたしは、それでも自殺はせずに「わたし」と呼ぶ装置をもう少し観察してみたいと望み、家を出て山へ向かうことに。ユという女性との記憶と死んだはずの友人の中西を道連れに山を目指し、吹雪の中で出会った黒い馬「ルンタ」に乗り、さらに深い雪の中を進んでいく。
生と死、現在と過去を行き来する人々が、人間の意識や時間の虚構を疑わせながらもまた確かな生を感じさせる。
天性の言語感覚と非凡な着想で書かれた傑作。保坂和志氏絶賛!デビュー作『星になる』も収録。
「そろそろ無理か」
ユが言った。たぶんそういった。
「無理ちゃうか」
わたしがいった。
わたしの見ているこいつがそういった。
ユが手元で携帯電話をいじっているのがわかった。
少ししてわたしの携帯電話がメールを受信した。そこにはこう書かれていた。
「でんきつけて」
わたしはため息をわざとつきながら明かりをつけた。そのとたんなぜか電子レンジが大きな音をたてて、パンッと破裂し壊れた。
ルンタがからだを揺すって泣いていたわたしが雪の上へ落ちた。雪は冷たく、わたしはわたしの中にいた。──本文より。
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目次
ルンタ
星になる
書誌情報
紙版
発売日
2014年10月29日
ISBN
9784062191913
判型
四六
価格
定価:1,760円(本体1,600円)
ページ数
242ページ
電子版
発売日
2014年11月28日
JDCN
0621919100100011000C
初出
ルンタ…「群像」2014年7月号、星になる…「群像」2011年4月号
収録作品
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作品名初出
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作品名
ルンタ
初出
『群像』2014年7月号
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作品名
星になる
初出
『群像』2011年4月号
著者紹介
兵庫県出身。神戸市立神戸商業高等学校(現神戸市立六甲アイランド高等学校)卒。倉本聰の富良野塾第二期生。1996年より劇団FICTIONを主宰。2011年より小説を発表しはじめ、2012年「ギッちょん」で第147回芥川賞候補、同年初の創作集『緑のさる』で第34回野間文芸新人賞を受賞。2013年「砂漠ダンス」で第149回芥川賞候補。同年、「コルバトントリ」で第150回芥川賞候補。