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秘恋 日野富子異聞
ヒレンヒノトミコイブン
- 著: 鳥越 碧

老人は峠に立つ墓標に語りかけた。「──真実は、その時代の権力者の思うがままに捏造されてしまいます。後の世の人々は、あたかもそれを事実と信じてしまい、まことに悔しい限りです。御台さまのことも希代の悪女と申す不心得者が出る始末で、何とも腹立たしくてなりませぬ」老人の名は喬之介。日野富子の幼なじみにして、信念に向かってまっすぐに歩んだ彼女の生涯を最後まで見守り続けた侍者だった──。
老人は峠に立つ墓標に語りかけた。
「──真実は、その時代の権力者の思うがままに捏造されてしまいます。後の世の人々は、あたかもそれを事実と信じてしまい、まことに悔しい限りです。御台さまのことも希代の悪女と申す不心得者が出る始末で、何とも腹立たしくてなりませぬ」
老人の名は喬之介。日野富子の幼なじみにして、信念に向かってまっすぐに歩んだ彼女の生涯を最後まで見守り続けた侍者だった。喬之介は、ひとりの女人を秘かに愛し抜いたことを誇りに思っていた。
まだ伊作と呼ばれていた少年のころの、富子といっしょにいた日野の里での日々に、喬之介は思いを馳せた。「秘恋」の物語が始まった──。
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目次
序章
一章 日野の里
二章 花の御所
三章 御台所さま
四章 応仁の乱
五章 愛憎
六章 母と子
七章 野分
書誌情報
紙版
発売日
2014年12月18日
ISBN
9784062192941
判型
四六変型
価格
定価:1,980円(本体1,800円)
ページ数
362ページ
電子版
発売日
2015年02月27日
JDCN
0621929400100011000O
著者紹介
1944年、福岡県北九州市生まれ。同志社女子大学英文科卒業。商社勤務ののち、90年、尾形光琳の生涯を描いた『雁金屋草紙』で第一回時代小説大賞を受賞。ほかの作品に『あがの夕話』『後朝』『萌がさね』『想ひ草』『蔦かずら』『一葉』『漱石の妻』『兄いもうと』『花筏 谷崎順一郎・松子 たゆたう記』『波枕 おりょう秘抄』『建礼門院徳子』などがある。また近著『めぐり逢い 新島八重回想記』では、独特の視点で新島襄と妻・八重の「奇跡の出会い」を描き注目を集めた。