
九番目の雲
キュウバンメノクモ
- 著: 山岡 ヒロアキ
オフィスのパワハラ地獄で同僚が失踪、一人暮らしの母親はアルツハイマーを発症し、妻との間にはすきま風が吹き始め、息子の様子もおかしい……。37歳の中堅メーカーの営業マンが、一度に押し寄せた人生の荒波を前に、ごまかし逃げることばかりの人生と決別し、正面からぶつかっていく中で、己の、そしてそれぞれの自尊心とは何かに向き合っていく。
中堅メーカーの営業マン、吾郎、37歳。
パワハラの嵐が吹き荒れるオフィスでは、ターゲットにされた同期の大江が失踪したとの噂が……。
また、近くに住む老いた母にはアルツハイマーを疑わせる兆候が現れ、それをきっかけに妻子との間には微妙なすきま風が吹き始める。
若き日に夢破れ、人を傷つけることも傷つけられることも避けて、ただただ日々を消費するように生きてきた吾郎が、この二つの出来事をきっかけに、自分らしく生きるとはなにか、自分にとって大切なことはなにか、自分にとって大切なのは誰なのかに向き合い、つまずきながら、答えを探していく。
ちなみに、クラウド・ナインとは英語で入道雲のこと。冒頭、一緒に風呂に入った息子が発したひと言から、主人公・吾郎の心に、この入道雲という言葉がひっかかり続ける。英語では、七階層ある天国のその二段階上ということから、「最高に幸せ」という意味もある。テンプテーションズ、ジョージ・ハリスンらが同名の曲、アルバムを発表している。
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書誌情報
紙版
発売日
2015年10月30日
ISBN
9784062197724
判型
四六
価格
定価:1,540円(本体1,400円)
ページ数
320ページ
電子版
発売日
2015年12月04日
JDCN
0621977200100011000V
初出
この作品は、アプリマガジン「小説マガジンエイジ」(編集・株式会社講談社、配信・株式会社エブリスタ)で2014年7月から12月まで連載したもの(連載時のタイトルは『クラウドナイン~九番目の雲』)に、加筆改稿したものです。
著者紹介
1961年、東京都新宿区生まれ。東京都立大学附属高等学校(現桜修館中等教育学校)卒業後、イタリアン・レストラン等で調理師の修行を積み、巨匠といわれるバーテンダーの元で技術を磨いたのち、26歳で麻布十番にバーを開業。2007年、自分の在り方に疑問を感じ、ここが潮時とそのバーの20周年を跨ぐ寸前で引退。周りを裏切り続けてきた自分に対する禊として、バーで垣間見てきた幾多の人生模様を物語として世に残せないかと作家を目指す。この『クラウド9~九番めの雲』がデビュー作となる。