プルートピア 原子力村が生みだす悲劇の連鎖

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プルートピア 原子力村が生みだす悲劇の連鎖

プルートピアゲンシリョクムラガウミダスヒゲキノレンサ

“プルートピア”は「特異なユートピア」である。アメリカはワシントン州東部のリッチランドに、ソ連はウラル山脈南部のオジョルスクに、プルトニウムの街・原子力村としての“プルートピア”をつくりだした。本書は、東西冷戦という境界を越えてプルトニウムが米ソを結びつけプルートピアを生みだした経緯に注目する。インタビューと膨大な公文書記録をもとに、チェルノブイリ、福島と繰り返されてきた惨劇の源泉を掘り下げる。


“プルートピア”は、アメリカとソ連が、第二次世界大戦後の社会の欲望を満たすためにつくりあげた、「特異なユートピア」である。そのいびつな理想郷は、国家の秘密プロジェクトであり、核兵器製造の“原子力村”でもあった。アメリカはワシントン州東部のリッチランドに、ロシアはウラル山脈南部のオジョルスクに、プルトニウムの街としての“プルートピア”をつくりだした。リッチランドのハンフォードとオジョルスクのマヤークには、それぞれにそっくりの核製造施設があり、“プルートピア”という酷似した凄惨な経験が、チェルノブイリと福島の悲劇の前に存在したのだ。
本書は、国境を越えた軍拡競争の歴史を、核爆弾製造にかかわった人々の暮らしや土地と結びつけて考察し、東西冷戦という境界を越えてプルトニウムが米ソを結びつけプルートピアを生みだした経緯に注目する。核爆弾製造現場で働き、被曝者となった二つの地域に暮らす人々によって語られた驚愕の事実の数々――。インタビューと膨大な公文書記録をもとに徹底追跡する著者は、チェルノブイリ、福島と繰り返されてきた惨劇の源泉を掘り下げることに成功した。


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目次

はじめに    
第1部 アメリカ西部の核最前線――閉ざされた空間
1 ミスター・マサイアス、ワシントン州に行く 
2 逃げ去る労働力    
3 “ハンフォードの奇跡”という嘘
4 先住民とマサイアス
5 プラトニウムがつくった街    
6 放射線にさらされる女性たち      
7 危険すぎたマンハッタン計画
8 食物連鎖    
9 ハエ、マウス、そして人間    
第2部 ソ連の労働者階級の原子力
10 発禁処分
11 グラークと爆弾    
12 青銅器時代の原子力  
13 機密保持    
14 ベリヤの来訪  
15 義務のための報告    
16 惨禍の帝国    
17 永続的な戦争経済を追う“いい男たち”   
18 スターリンのロケット・エンジン
19 リッチランドの独裁者    
20 近隣の人々    
21 ウォッカ社会 
第3部 プラトニウムの惨事
22 危機管理をする 
23 傷つきながら歩く  
24 二度の検視   
25 ワルーク丘陵地
26 テカ川の静かな流れ
27 再入植    
28 免責地帯   
29 社会主義的消費者の共和国  
30 開かれた社会の使い道   
31 キシュチムの爆発、一九五七年
32 汚染された村に生きる
33 私的な部分 
34 地図にない特別な街
第4部 プルトニウムのカーテンを取り去る    
35 プルトニウムをポートフォリオの株式に
36 帰ってきたチェルノブイリ
37 一九八四年    
38 見捨てられた人々   
39 甲状腺不全    
40 非公式な代弁者 
41 核の情報公開   
42 すべての王の「家臣」
43 未来

書誌情報

紙版

発売日

2016年07月29日

ISBN

9784062199995

判型

四六変型

価格

定価:3,300円(本体3,000円)

ページ数

514ページ

著者紹介

著: ケイト・ブラウン(ケイト・ブラウン)

メリーランド州立大学の歴史学の教授。 2005年に『A Biography of No Place: From Ethnic Borderland to Soviet Heartland』を発表。ポーランド人、ドイツ人、ユダヤ人、ウクライナ人、ロシア人が混在して住んでいたロシアとポーランドの国境地帯の、1925年から30年間の変遷を描き、優れた歴史書に贈られるアメリカ歴史学協会ジョージ・ルイス・ビア賞を受賞した。 2009年グッゲンハイム助成金を受ける。 〈タイムズ・リテラリー・サプルメント〉〈アメリカン・ヒストリカル・レビュー〉〈クロニクル・オブ・ハイヤー・エデュケーション〉〈ハーパーズ・マガジン・オンライン〉に寄稿。

訳: 高山 祥子(タカヤマ ショウコ)

1960年、東京都に生まれ。成城大学文芸学部ヨーロッパ文化学科卒業。訳書に、ジェフリー『M16秘録』(筑摩書房)、ウィルソン『フェア・ゲーム』(ブックマン社)、スコットライン『偽装証人』(扶桑社)、モラン『わたしはCIA諜報員だった』(集英社)などがある。

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