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15歳、ぬけがら
ジュウゴサイヌケガラ
- 著: 栗沢 まり
母子家庭で育つ中学3年生の麻美は、「一番ボロい」といわれる市営住宅に住んでいる。家はゴミ屋敷。この春から心療内科に通う母は、一日中、なにもしないでただ寝ているだけ。食事は給食が頼りなのに、そんな現状を先生は知りもしない。 夏休みに入って、夜の仲間が、万引き、出会い系とつぎつぎに非行に手を染めていくなか、麻美は同じ住宅に住む同級生がきっかけで、学習支援塾『まなび~』に出会う。
母さんが茶色の紙袋を揺らしてる。
ものすごく久しぶりのハンバーガー。ポテトもある。ドリンクも。つばが出てきて、ガツガツ食べて、ゴクゴク飲んだ。
「そんなにあわてて食べなくても」
母さんは疲れた声で、でも、笑ってた。さびしそうに笑って、ビールをゴクリゴクリとのどに流しこんでいる。
母さんはどうやってこのお金を作ったんだろう。
想像したら、のどが詰まった。食べつづけることを拒否することも考えたけど、いいにおいと食欲に負けた。なにも考えないことにして、久々の味を楽しむ。
すべてを味わいおえたあと、どうしようもなく苦しくなった。ゴミ袋と包み紙が、あたしに問いかけてくる。
おまえは何者だ。なんで、平気で食べられるんだ。
そしてまた、そう思うそばから別の自分が否定する。
考えるな。考えたら生きていけなくなるぞ。
――本文より
母子家庭で育つ中学3年生の麻美は、「一番ボロい」といわれる市営住宅に住んでいる。家はゴミ屋敷。この春から心療内科に通う母は、一日中、なにもしないでただ寝ているだけ。食事は給食が頼りなのに、そんな現状を先生は知りもしない。 夏休みに入って、夜の仲間が、万引き、出会い系とつぎつぎに非行に手を染めていくなか、麻美は同じ住宅に住む同級生がきっかけで、学習支援塾『まなび~』に出会う。
『まなび~』が与えてくれたのは、おいしいごはんと、頼りになる大人だった。
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目次
1 マヨネーズとハンバーガー
2 パンの耳と野菜炒め、それから海苔弁
3 湯気の立ったソース焼きそば
4 カツ丼、チャーハン、ハンバーグ
5 クリームパンと塩おにぎり。あったかいお茶も
6 ハンバーグ弁当。ひときれのパン
7 貧乏チャーハンとフレンチトースト
書誌情報
紙版
発売日
2017年06月21日
ISBN
9784062206013
判型
四六
価格
定価:1,430円(本体1,300円)
ページ数
250ページ
電子版
発売日
2017年08月25日
JDCN
06A0000000000000816C
著者紹介
作家。都留文科大学卒業。公立中学校で国語教諭として勤務後、塾講師、学習支援塾スタディアドバイザーなどを経験。本作は、第57回講談社児童文学新人賞佳作受賞作。北海道在住。