「国語」入試の近現代史
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「国語」入試の近現代史

コクゴニュウシノキンゲンダイシ

講談社選書メチエ

現代文の読解力は客観評価できるか?
国語入試のなかでも、とりわけ「現代文」という科目は、読解力を問わねばならないため、つねに、客観性と公平性をどう実現するかという難問にさらされてきた。高等学校の共通試験に現代文が定着した大正期から、戦前期を経て、戦後民主主義、小林秀雄と天声人語のブーム、そして共通一次、マークシート化に至るまで、入試問題はどのように国民の言葉=国語を規定してきたのか。その歴史的な文脈を明らかにする力作。

【目次】
はじめに──革命防止装置としての入試現代文
第1章 入試現代文前史
第2章 入試現代文のはじまり
第3章 帝国大学の入試現代文
第4章 「読む」とはどういうことか
第5章 日本精神の発揚と国文学の急成長
第6章 戦後民主主義教育のなかの入試現代文
第7章 「傾向と対策」の登場――予備校と「蛍雪時代」
第8章 「客観」幻想の果て――マークシート化をめぐる言説
おわりに──「国語」の成立


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目次

はじめに──革命防止装置としての入試現代文
第一章 入試現代文前史 15
 受験競争のはじまり/受験雑誌の登場/現代文前史/共通試験の導入/現代文に対する期待と不安/「授け」られる現代文──思想・知識・感情のコントロール
第二章 入試現代文のはじまり
  現代文は理解力を試す/逐語訳からの脱皮/新しい問題文、新しい設問/新中間層の拡大と本を買う若者たちの増大/「文は人なり」の思想/伝統校における古典主義の復権  
第三章 帝国大学の入試現代文
 帝国大学の入試/東京帝国大学の入試現代文/東北帝国大学の入試現代文──岡崎義恵の仕事と現代文の定着/大学における文学講義と現代文
第四章 「読む」とはどういうこか
 学校教育における「解釈」の変遷/「読む」という行為をめぐって──芦田惠之助と垣内松三/センテンス・メソッドの技法/問題文の長文化/新しい鑑賞主義/保科孝一の言論
第五章 日本精神の発揚と国文学の急成長
 紙上の人物考査/踏み絵としての作文/現代文と体育の接近/日本精神の発揚/戦時下の現代文
第六章 戦後民主主義教育のなかの入試現代文
 GHQ/SCAPの教育政策と適性検査の導入/二兎を追う国語政策/文部省が考える国語科の試験問題/読解の客観問題/問題文のステレオタイプ化/新しい未来の展望/小説を小説として読むという出来事
第七章 「傾向と対策」の登場──予備校と「蛍雪時代」
 予備校の登場/道徳的教育からの解放/受験のテクニック/「蛍雪時代」の時代/漱石のすゝめ──真理探究のための読書/文学史と二項対立のキーワード/大学受験ラジオ講座の登場
第八章 「客観」幻想の果て──マークシート化をめぐる言説
 大学への突き上げ/伝統への回帰と小林秀雄ブーム/「天声人語」の文章観/読む力から選ぶ力へ/試行テストの開始/マークシートは人間を頽廃させるか/客観幻想の果て
おわりに──「国語」の成立

あとがき

書誌情報

紙版

発売日

2008年01月12日

ISBN

9784062584050

判型

四六

価格

定価:1,650円(本体1,500円)

通巻番号

405

ページ数

244ページ

シリーズ

講談社選書メチエ

電子版

発売日

2015年07月24日

JDCN

0625840500100011000A

著者紹介

著: 石川 巧(イシカワ タクミ)

1963年生まれ。立教大学文学部教授。立教大学大学院後期課程満期退学。 主な著書に、『九州という思想』(共著)、『「いい文章」ってなんだ? 入試作文・小論文の歴史』『高度経済成長期の文学』『幻の雑誌が語る戦争』、『幻の戦時下文学』(編著年)などがある。

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