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時間の正体 デジャブ・因果論・量子論
ジカンノショウタイデジャブインカロンリョウシロン
- 著: 郡司 ペギオ-幸夫

科学と哲学が直面する最大の難問に挑む! 「わたし」と不可分に結びついた「現在」を、科学はいかに論じられるか。量子力学や生命科学、脳科学による成果と課題を哲学的時間論と交差させる、興奮の一冊。
「わたし」はこの現在に立ち尽くす。「わたし」には現在しか許されない。にもかかわらず、「先ほどの現在」、「5分後の現在」といった変化を認めるなら、現在が運動する土台としての三人称的歴史が必要となる。こうして、時間は、一人称と三人称の接続する場所として開示されることになる。現代の脳科学や認知科学は、主体がこの世界の中で生きているということは、世界と自らとの折り合いをつけることであるということを明らかにしつつある。それは、世界とその表象とを、絶えず調停することであり、両者の間に同期をとることである。自分自身の運動と、その結果に対する知覚に関して、脳は絶えず同期をつくり出す。ときに時間は縮み、ときに因果関係は逆転さえする。このような主観的時間の現象が実験的に論証されつつある。翻って同期をつくるとは、まさに「現在」を絶えずつくることである。本書で展開する時間論は、これらの現象を理解する強力なツールとなるだろう。
【目次】
第1章 なぜ時間なのか
第2章 デジャブ・木/森の可換性
第3章 マルコポーロ――時空の内的記述
第4章 内部観測からA系列・B系列へ
第5章 マクタガート的不可能性からの転回――デジャブ再考
第6章 因果論・宿命論の相克と量子論
第7章 認知的時間におけるA系列・B系列間の調停
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目次
第1章 なぜ時間なのか
1 幽体離脱
2 ベビーシッターエコノミー
3 約束され、決済される現在
第2章 デジャブ・木/森の可換性
1 カードマジックの時間
2 まだ半分、もう半分
3 図を見る・地を見た
4 デジャブ体験
5 デジャブから時間へ
第3章 マルコポーロ──時空の内的記述
1 マルコポーロとマクタガート
2 因果集合と因果的歴史
3 時間を評価するジーブ
4 因果的歴史の時間モデル
5 因果的歴史モデルとしての束
6 排中律の破れ
第4章 内部観測からA系列・B系列へ
1 同一性原理を潜在する境界
2 運動の流れと時間の流れ
3 「いま」の全一性、その現実性への転回
4 A系列とB系列への分化
5 統語論としてのA、意味論としてのB
第5章 マクタガート的不可能性からの転回──デジャブ再考
1 マクタガートにおけるA系列の不可能性
2 マクタガートにおける時間のクオリア
3 因果集合・因果的歴史上の一般化されたA系列・B系列
4 現在の担うa/{a}─共役性
5 a/{a}─共役性が含意する無限の階層性と混同
6 A系列とB系列の相互作用:その可能性
7 A系列とB系列との調停:デジャブの起源
第6章 因果論・宿命論の相克と量子論
1 量子もつれ
2 量子テレポーテーション
3 因果的時間のタイプと同時間面を成すトークン
4 非因果集合と時間発展の齟齬
5 時間の自己修復能
6 二種類の二人称
第7章 認知的時間におけるA系列・B系列間の調停
1 自由落下の恐怖と時間
2 未来の前倒し
3 因果関係の転倒
4 能動・受動の転倒とデジャブ
5 AとBの調停がつくる時間伸縮と因果関係の転倒
6 客観・主観的状況の区別と混同
参考文献
あとがき
書誌情報
紙版
発売日
2008年09月12日
ISBN
9784062584227
判型
四六
価格
定価:1,870円(本体1,700円)
通巻番号
422
ページ数
266ページ
シリーズ
講談社選書メチエ
電子版
発売日
2013年07月26日
JDCN
0625842200100011000S
著者紹介
1959年生まれ。東北大学理学部卒業。東北大学大学院理学研究博士後期課程修了(理学博士)。早稲田大学理工学術院基幹理工学部表現工学科教授。著書に『時間の正体』『生きていることの科学』『群れは意識をもつ』ほか多数。